2006年2月に京都市伏見区で起きた「京都認知症母殺害心中未遂事件」ってご存知ですか?
認知症の母親をひとりで介護していた男性が生活苦の末に犯行に及び、自らも命を絶とうとし、裁判では執行猶予判決となったが、その後自殺していまった、という事件。
「もう生きられへんのやで。ここで終わりや」
「そうか、あかんのか…一緒やで。お前と一緒や」
「すまんな。すまんな」
「こっちに来い…お前はわしの子や。わしがやったる」
このやりとりも有名で、地裁が泣いた事件として知られています。
その事件を題材にした絵本「さいごの散歩道」(文・長嶺超輝、絵・夜久かおり)が現在発売されています。
キリッと澄みわたる寒空の下、ある冬の日のことだった。
駆ける列車、揺れる車内。
窓を流れる風景を、無邪気に楽しむ母。
母が腰かける車いすを、背後で支えるハル。
ハルは、すでに限界を感じていた。
精神的に、肉体的に。
そして、経済的にも。
だが、これ以上、誰にも迷惑は掛けられない。
終点の駅名がアナウンスされた。
幾重にも連なる人の壁をかすめるように、車両がホームへと滑り込んでいく。
扉が開き、ハルはホームへ車いすを押し出し、エレベーターで改札階へ降りる。
ふたりにとって、さいごの散歩道の始まりだった。
「この絵本は、2006年に京都で実際に起きた事件をモチーフにした物語です。
現実の事件をもとに、家庭内介護や生活保護行政のあり方など、現代の日本社会が抱える歪みが、最悪の形で噴出したものといえます。なぜこのような悲しい事件が起こってしまったのか、どうすれば同じような事件が起きることを防げるのか、そういった課題や解決策を考えるきっかけになる「大人の絵本」です」と雷鳥社はしています。
巻末には弁護士、臨床心理士、介護離職防止アドバイザーによる解説も付いています。
価格は1500円(税抜き)。
絵本ではありますが、介護士としても読んで損はしない書籍です。
施設内での勉強会等でも扱えそうですね。
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