大阪の高校生の約20人に1人が、家族の介護や家事などの「ケア」を担っていることが、大阪歯科大医療保健学部らの研究グループによる大阪府内の高校生を対象に実施した調査で明らかになりました。
大人が担うような家庭のケア役割を引き受ける「ヤングケアラー」について、子ども自身を対象にした本格的な調査は国内初とみられています。
ヤングケアラーとは、一般社団法人日本ケアラー連盟が「家族にケアを要する人がいる場合、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護などを行っている18歳未満の子」と定義しているものだそうです。
調査は2016年1~12月、大阪府内の公立高10校を対象に実施し、5246人が回答。
別居中も含めた家族に介護や手伝い、精神的サポートを必要としている人がいる生徒は13%の664人で、約半数の325人が「自分がケアをしている」と回答。
うちヤングケアラーとみなせるか議論のある、幼いきょうだいがいるという理由のみで「ケアをしている」と答えた生徒を除くと、全体の5%にあたる272人だったのだとか。
ケアを要する家族は、祖母129人、祖父61人、母55人となっており、状態は身体障害や身体機能の低下のほか、病気や精神疾患が多かったそうです。
ケアの内容については、家事115人、力仕事106人、外出時の介助・付き添い92人、感情面のサポート74人、の順で多く、頻度は半数弱の123人が「毎日」「週に4、5日」と回答。
1日あたりのケアの時間は1時間未満が最多だったようですが、2時間以上担う生徒も学校のある日で22%、ない日は39%に上ったのだそう。
ケアを担う生徒は日常生活や学校生活の満足感が低い傾向がみられたとの事ですが、約半数がケアをしていることを家族以外に話しておらず、福祉の専門職に相談している生徒は5%未満だったそう。
研究グループは「学校がない日に8時間以上ケアをしている生徒もおり、過剰な家庭役割を背負っている子どもが少なくないことが分かった。ヤングケアラーの存在を社会で認識し、支援策を講じるべきだ」としています。
研究グループによると一部地域の中学校の教員を対象にした調査例では、ヤングケアラーの存在割合は1%だったことが報告されており、「教員が把握している以上に家庭内のケアを担う生徒が多い可能性がある」と指摘しています。
今回の調査では、ケアをしている生徒の少なくとも4割が小学生の頃から世話を始めていたほか、「経済的に余裕がない」と答えた生徒に存在割合が高い傾向がみられています。
ヤングケアラーへの先進的支援で知られるイギリスでは各自治体に実態把握の義務を課し、学校にケアラーが相談できる教員を設置するなどしているそうです。
研究グループも「ケアは『お手伝い』として見過ごされがちだが、大人が担うレベルの過剰な役割を負わされて勉強や課外活動がままならない子もいる。子どもの権利の視点からの支援策が必要だ」と話しています。
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